物損と慰謝料

下記のサイトによると,ノートパソコンのバッテリーパックの加熱により発火した件について,平成27年3月24日,神戸地裁でパソコン製造メーカーに対して慰謝料の支払いを命じる判決の言渡しがあったそうです。

 PC発火でビデオ失う「精神的苦痛」と賠償命令YOMIURI ONLINE

 東芝製のノート型パソコンが発火し、パソコン内のデータや近くに置いていた子供を撮影したビデオテープが失われたとして、神戸市東灘区の自営業男性が同社を相手取り、約960万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、神戸地裁であった。吉田祈代裁判官は「復元困難で、精神的苦痛として考慮すべきだ」などとし、同社に慰謝料など約78万円の支払いを命じた。

 ノートPCから出火 東芝に賠償命令 神戸地裁神戸新聞NEXT

 吉田裁判官は「本来出火の危険が想定されないもので、近くで寝ていた男性が一定の恐怖を感じたことは認められる」として、男性の精神的苦痛に対する慰謝料の支払いも一部認めた。 

上記の記事を前提とする限りでは,この出火により人的な被害は生じておらず,物的な損害しか発生していないようです。

このように不法行為により物的損害しか発生していない場合には,裁判所は原則として慰謝料の発生を認めていません。例外的に慰謝料の発生が認められるのは,①物損がペットの死傷であった場合や,②例えば,自動車が家に突っ込んだ場合のように単なる物的損害のみならず生活利益の侵害も発生していると評価できる場合に限られるものとされています。

このような裁判所の傾向からすると,物損事件について慰謝料の発生を認めた今回の判決は珍しいものと考えられます。ただ,YOMIURI ONLINEの記事によると慰謝料はパソコン内のデータやビデオテープの喪失による苦痛について認められたとの内容であるのに対し,神戸新聞NEXTの記事だと恐怖心による精神的苦痛について認められたとの内容となっており,両者に齟齬があるので,実際の判決文がどのような内容だったのか気になるところです。

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